講師 星 茂行 氏
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令和5年度 水戸ブロック専門研究会 研修報告書
1.日時 令和5年8月1日(火) 14:00~16:00
2.場所 ザ・ヒロサワ・シティ会館 集会室1、2号
3.演題・講師
演題 「就学に向けての関わり方」
講師 一般社団法人 臨床発達心理士認定運営機構
代表理事 星 茂行 氏
【5歳児健診について】
5歳児健診は1996年に鳥取県にて発達障害の早期発見につながるものと期待され、始まる。
5歳児健診を始めるためには準備が必要。医師の診察に決まった形式はなく、内科的な診察だけではなく、会話の成立具合、手指の巧緻性、指示に従う様子、情緒の安定性、コントロールする力などを診察する項目が必要である。下記のような項目を確認する。
1 会話
名前、所属の保育園・幼稚園、組の名前、担任の先生の名前、給食で一番おいしいもの、母親の料理で何が一番おいしいか等尋ねる。
2 動作模倣
手を横に挙げる、前に挙げる、目をつぶって立てるか、片足立ちできるか等
3 物の用途を聞く
靴、帽子、お箸、本、時計はなにするものかな?
4 比較概念を聞く
お湯は熱い、氷は?
5 左右の確認(4歳位で分かるようになる)
6 左右を使った構文の理解
右の手をあげて、右の足をあげて
7 安静閉眼
手を膝に置き、よーい初めの号令で眼を閉じさせる。(20秒間閉眼が可能)
8 じゃんけん、しりとり(じゃんけんは90%が可能。じゃんけんができないと学校に進学した時に遊べない問題が出てくる)
9 読字(2文字のひらがな単語を3つ)
あお、はな、等まずは読めることが大切。読めるようになってその後、書けるようになる。
身体発育の確認と、保育園や幼稚園などの集団生活の中で気がつく「落ちつきがない」「動きがぎこちない」「興味に偏りがある」などといったお子さんが抱える課題や困難さを、保護者の方と関係機関が一緒に確認し、安心して生活を送れるように適切な支援を行う。
実施したら、その後どう支援に繋げるのかが大切。実施したままにはしない。
【就学時健診について】
初等教育に就学する直前に行われる健康診断。就学前年度の11月30日までに実施される。身体の疾患や、知的発達の度合いが検査される。就学に問題がない場合は、普通学級に就学。課題が見られる場合は、就学相談を受けるよう指導されることが多い。5月頃から就学時相談を実施している場合もある。
【就学相談について】
教育委員会などで、障害のある場合や、小学校での生活について心配なことがある場合、就学相談(就学する学校や学級についての教育相談)を行っている。
【情報の引継ぎについて】
保育園や幼稚園で個別の配慮を受けていたり、医療や療育などの専門機関に通っていたりする場合は、これまでの支援に関わる情報を小学校に引き継いでおくことが大切。かかわりのあった先生や支援者と一緒に、小学校へ引き継ぎたい情報をまとめておくと良い。
支援情報をまとめて保存するための「サポートファイル(サポートブック)」がある自治体もある。サポートファイルは保護者が持ち、次に繋げられるようになっている。園の情報、今までの健診の記録を記載することで、異なる機関で同じ質問を保護者にする手間が省ける。親の同意書等で、個人情報保護は徹底して行う必要がある。
【アイリスシート(就学支援シート)の活用】
就学前機関から小・中学校への連携の際に活用。情報は療育機関や保育園・幼稚園でアイリスシートを作成し、情報共有に活用する。また、そのアイリスシートを保護者が入学前の学校説明会時に学校へ提出(遅くとも2月までには)することで、必要な情報が共有され、進
学先での個別計画の作成に活用できる。小・中・高と利用できる。
【自閉症児の特徴】
〇感覚の過敏性がある
・触覚過敏・・スキンシップを嫌う、触られるのが苦手
・聴覚過敏・・集団騒音、泣き声、耳ふさぎ
・味覚や嗅覚・・偏食等
〇新しい場面やパターンが崩されることへの抵抗がある
→聴覚でなく視覚で情報を提示(TEACCHプログラムなどが有効)
〇状況理解の難しさとコミュニケーションのつまずきがある
・細かく見ることは得意、いくつかの情報を関連付け全体を理解するのは苦手
→絵カードや文字などの視覚的伝達手段が有効
〇模倣やみたて、共同注意など前言語機能のつまずきがある
【アスペルガー障害について】
〇言語発達そのものの遅れはない
〇発達の偏りが多い。
・人の気持ちが分かりにくい
・独り言が多い
・比喩などが分かりにくい
・場の空気に合わせられない
・突然発言する
・自分勝手な行動をとる
・自分の決まりを守ろうとし、こだわる
〇運動に苦手さがある
〇LDとアスペルガー障害が重なる部分や、ADHDの注意力散漫さ、衝動性、多動性と重なっていることが多い
・・こだわりがあって多動なのか、多動があってこだわっているのか、見極める。
【事例検討】
言葉の遅れがある幼児(6歳2か月)
・就学時健診で言葉の遅れを指摘。名前の認識はある。
・おままごとや鬼ごっこなど好きな遊びを通してコミュニケーションが取れる
・鍵盤ハーモニカはできないが興味がある
・4まで数えられる。20ピースのパズルができる。手先は不器用。知的な遅れか、手先の問題か分からない。
・会話でのやり取りは苦手だが拒否はしない
・保護者は特別支援学級に就学するか悩んでいるが、母親は困り感を感じていない。
以上の事例に対しどうアプローチするかグループワークを実施した。
(グループからでた意見)
・集団での生活はどうなのか、園からの情報収集
・母の気持ちに寄り添う。母が現在感じていること等話を聞く
・特別支援学級などの情報提供
・母は困り感がないが、児はどうなのか。困っていることがないか確認
・数字や手先の不器用さは客観的指標があると母が理解しやすいのではないか。
・得意なこと、苦手な事の詳細を確認するため発達検査の実施を促す。
・療育等利用できるサービスの提案を行う。
・就学時は学校への情報提供を行う。
等、様々な意見を共有することができた。
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